したがって、無収入の妻と別居する収入のある夫は、原則として妻の生活費を支払わなければなりません。また、どちらか一方の収入が少ない場合には、収入の多い側が少ない側の生活費を分担することになります。なお、この婚姻費用は、同居している場合でも、生活費がもらえない場合には請求できます。
①不貞行為があったこと。
不倫・浮気は、秘密裏に行われることから、証拠が得られないこともあります。証拠が揃わない段階で不倫や浮気と決めつければ、当事者が証拠隠滅を図る恐れがあります。したがって、不貞行為による慰謝料請求をするには、どのような内容で、いつから起こった事であるかについて、まずは証拠を確保することから始める必要があります。
不倫相手が不倫・浮気をしたことを認めない場合、不倫・浮気があったことを証明しなければならないのは、慰謝料を請求する側です。また、いったんは口頭で不倫・浮気を認めておきながら、後々やっぱり認めないということも予想されます。ですから、証拠を確実に押さえておくことは、とても大切です。
この証拠は、決まったものはありませんが、第三者から見ても「間違いない」と思える証拠が必要になります。例えば、
・ ラブホテルから出てくる場面を撮影した写真やビデオ
(費用を要しますが、探偵事務所への調査依頼も考えられます)
・ 肉体関係があることを前提とする内容の電子メール
・ 電話の通話明細
・ レストラン、ホテル等の領収書
・ クレジットカードの利用明細
・ 不倫・浮気をしたことを認める一筆(謝罪文等)
・ 第三者の証言
②不貞行為の当時、夫婦の婚姻関係が破綻していなかったこと。
③相手方が既婚者であることを知っていたこと、または、知らなかった ことについて過失があること。
配偶者が自分が結婚していることを不倫相手に隠していたり、離婚手続き中であるなどと偽って交際しており、相手もそれを信じていたことが無理もないような場合には、慰謝料請求が認められないことがあります。
④消滅時効期間(損害の事実と不貞行為の相手を知った時から3年、不貞行為のあった時から20年)が経過していないこと。
この慰謝料請求権は、夫婦の一方が他方と第三者の不貞行為を知った時から時効が進行しますので、知ってから3年以上経過すると、3年以上前に生じた損害は時効により消滅してしまいますので注意が必要です。
夫婦の一方が不倫をした場合、不倫は法律上の離婚原因に当たるため、夫婦間の離婚の合意が成立しない場合であっても、裁判所により離婚が認められることになります。また、不倫をした配偶者のみならず、不倫相手も不法行為責任を負い、損害賠償(慰謝料)請求を受ける立場になります。さらに、不倫をした配偶者からの離婚請求は原則として認められません。不倫をしてしまった方は、これらのことを踏まえて慎重に対応する必要があります。その際、以下の3つのことは絶対に行なってはいけません。
裁判所は、不倫の証拠がなければ、不倫があったとは判断しません。証拠を相手にとられないように注意しましょう。証拠で多いのは、LINE、探偵社の調査報告書(写真)です。また、不倫相手に証拠を残しておくことも、妻(夫)にばらすぞと、脅されるおそれがあるため危険です。
素直にすべてを認めてしまうことが、よい解決に結びつくとは限りません。かえって、離婚協議において決定的に不利になりかねません。 不倫の事実を認めてしまえば、離婚の原因を作った有責配偶者となり、高額な慰謝料を支払うことになる可能性が高まります。また、有責配偶者という立場になると、自らが離婚することを望んでいた場合でも、離婚請求することは原則として認められません。
離婚が成立する前に、慰謝料だけ支払ってはいけません。あくまで、離婚に応じ ることを条件に慰謝料を支払う約束をしなければなりません。お金は、離婚を引き 出すための最大のカードです。