離婚協議書の作成法

離婚協議書は、離婚に関する合意書です。後日もめないためにも、下記の事柄は必ず記載しておきましょう。
なお、離婚協議書は、あくまで「離婚に関する合意書」ですから、それだけでは法的な執行力はありませんので、ご注意ください (公正証書であれば法的な執行力があります)。

養育費

  • 養育費とは、子供が社会人として自立するまでに必要となる費用です。
    衣食住の経費や教育費、医療費、娯楽費など、自立するまでに必要となるすべての費用が養育費に当たります。婚姻中にもらうのが婚姻費用で、離婚後にもらうのが養育費と言ってもよいでしょう。 期間の目安としては、成人年齢引き下げで高校卒業までの18歳、従前どおり20歳、大学卒業までの22歳となりますが、20歳までの支払いとするのが通常です。
    また、養育費の支払いは、子供を養育している親が、養育していない親に請求できるものであり、親権がどちらにあるのかとは関係ありません。 なお、妻の不倫が原因で離婚した場合であっても、養育費は支払わなければなりません。不倫については慰謝料として精算されるべきであり、子供の養育のための費用とは性質が異なるからです
  • 養育費の額は、負担する側の経済力や生活水準によって変わってきます。
    基本的には、双方の収入のバランスに応じて養育費を算定します。また、財産分与や慰謝料は一括で支払うのが原則ですが、養育費は通常定期的に負担していきます。養育費の額を決めるのは難しい問題ですが、よく話し合って決めておかないと、後々トラブルになることもあります。
    目安として、裁判所が養育費算定表を公表しています。
    算定表の基準は、①夫と妻の税込年収、②子供の人数、③子供の年齢、に応じて2万円程度の幅で養育費の額が決められています。この算定表は、インターネットで調べることができます。
  • 養育費を一括で払ってもらうことは可能ですが、デメリットもあります。
    養育費は、毎月分割で払うのが一般的ですが、相手方の性格上、支払いが期限どおりに行われないことが予想されたり、就労状況が不安定で将来の支払いに不安があるような場合には、一括で支払ってもらうことも考慮しなければなりません。但し、一括で支払ってもらう場合には、毎月支払ってもらう場合の額を基準として、将来分を先に受け取ることに対する中間利息を控除して総額を決める必要があります。また、養育費のうち、「通常必要と認められるもの」については贈与税の課税対象にはなりませんが、一括払いの場合には、「通常必要と認められるもの」とは認められず、贈与税が課される可能性がありますので注意が必要です。さらに、子供の養育をする必要がなくなった時に、清算の問題が出てきます。例えば、子供が20歳になる前に死亡した場合や、妻が再婚をして子供が再婚相手と養子縁組をして十分に扶養を受けているという状態になった場合に、養育費の返還の問題が出てきます。
  • 児童扶養手当は、養育費の算定には無関係です。
    児童扶養手当とは、簡単に言うと、「母子家庭に対する市町村からの援助」です。児童扶養手当の支給は、父の養育費支払い義務を消滅させるものではありません。そのため、母側からの養育費請求は可能です。 では、養育費の算定の際、母が児童扶養手当を受給している場合、母の収入にこの児童扶養手当額を算入すべきなのでしょうか。児童扶養手当の支給制限所得額を計算する上で、父から受け取った養育費の8割は母の所得として計算されますが、養育費を算定するときには、児童扶養手当をもらっているとしても、その額を母親の収入に加算しないのが一般的な扱いです。
  • 養育費の支払いは、場合によっては長期間に及びます。
    その間に、事情が大きく変わることもあります。例えば、子供の進学の問題や支払い側の倒産・失業、受け取る側の失業、再婚などがそれに当たります。基本的には、離婚時に決めた養育費の額や支払い期間を変更することはできません。しかし、上記のように経済的事情が大きく変化した場合には、養育費の増額や減額が認められることもあります。まずは、お互いに話し合い、合意が得られない場合には、家庭裁判所に調停を申し出ることができます。養育費の変更は、理由が正当である場合には、認められることも多いです。
  • 養育費の支払いに連帯保証人を付けることも不可能ではありません。
    しかし、養育費の支払いに保証人を付けることに関しては、裁判所は消極的であり、公証役場においても認めない役場もあります。 その主たる理由は、養育費は、親として支払うべき固有の義務(一身専属的な義務)であるから、保証人を付けることは好ましくないと考えられているからです。 ただ、養育費支払いについての保証は、養育費の性質上その効果は限られてはいるものの、養育費支払い義務者の親族(例えば親)が連帯保証人になってもらえるなら、養育費の支払いを少しでも確実にするために、連帯保証人を付けることを検討してみてもよいでしょう。

未払養育費の回収方法(強制執行)

  • 養育費の支払いが滞ってしまうことは少なくありません。支払いが長期にわたることや、そもそも支払い義務者の経済力が乏しいことが原因となっているようです。しかし、親には子供を扶養する義務があり、これは離婚したからといって消えるものではありません。養育費は子供を育てるための大切なお金です。その大切なお金を相手に払ってもらうための方法が強制執行による給与等の差し押さえです。
  • 強制執行とは、約束どおりに養育費や慰謝料などが支払われない場合に、強制的に相手方の財産を差し押さえ、支払いを実行させる制度です。夫の給与・賞与・退職金、夫名義の預貯金・自動車・土地・建物などから、強制的に取り立てることができます(ちなみに、強制執行を行えば、相手方は任意の支払いに応じることもあります)。
  • 強制執行の対象としては、相手方の給与を差し押さえるのが一般的です。通常の強制執行においては、給与の4分の1までしか差し押さえることができませんが、養育費の場合には、2分の1まで差し押さえができることになっています。
  • また、通常、支払い期限が到来していない将来の権利については、強制執行をすることはできません。しかし、養育費については、既に期限の到来している支払いが履行されていない場合には、未だ期限が到来していない部分についても一括して、相手方の給与等を差し押さえることができます。
  • なお、給与を差し押さえしてしまうと、勤務先に差し押さえの事実が判明してしまうため、相手方は勤務先に居ずらくなるため、義務者(通常の場合、夫)が勤務先を辞めてしまうことがあり得ます。元の夫が職を失えば養育費の回収は困難となりますので、強制執行を行う際には、強制執行の方法等を慎重に検討する必要があります。

慰謝料

  • 慰謝料とは、相手の浮気や暴力など相手方の有責不法な行為によって「精神的苦痛」を受けたことに対する損害賠償金です。
  • 離婚に伴う慰謝料は、①個別的慰謝料と②離婚慰謝料に分けることができます。
  • ① 個別的慰謝料とは、暴力や不貞行為などから生じる精神的苦痛の慰謝料をいいます。
    ② 離婚慰謝料とは、離婚せざるを得なくなったことそのものによる精神的苦痛の慰謝料をいいます。 ただし、実際には、これらを区別せずに一括して慰謝料を認定するこ とがほとんどです。
  • では、どのような場合に慰謝料は認められるのでしょうか。
    慰謝料が認められるためには、相手方の行為が違法であることが前提となります。
    精神的苦痛を感じていても、相手方の行為が違法とは言えない場合、慰謝料は認められません。不貞行為と呼ばれる浮気や不倫や暴力が違法行為の典型的な例です。単なる性格の不一致や価値観の違いでは、違法行為とは言えないことが多く、慰謝料請求できない場合がほとんどです。

  • 慰謝料が認められるケース
  • ・不倫や浮気
    ・配偶者に対する暴力行為
    ・生活費を渡さないなどして、配偶者としての義務を果たしていない
    ・通常の性的交渉の拒否
  • 慰謝料が認められないケース
  • ・相手方に離婚の原因がない
    ・お互いに離婚原因の責任がある
    ・「価値観の違い」など、離婚原因に違法性がない
  • 慰謝料の額について
    精神的苦痛を客観的に算定するのは困難です。そのため、明確な基準はありません。

  • 慰謝料額の算定に考慮される要素としては、
  • ・離婚原因となった違法行為の責任の程度
    ・精神的苦痛の程度
    ・婚姻期間
    ・年齢
    ・未成年の子供の有無
    ・社会的地位や支払い能力
    ・請求者の経済的自立能力
    ・請求者側の責任の有無や程度
    ・どの程度の財産分与があったか
    といったものが挙げられます。
  • 現実的には、200~300万円程度が平均的な数字です。
    なお、財産分与が全くない場合には、慰謝料に加味されてやや高額になる傾向があります。
  • 離婚したいときは解決金を支払う。
  • ・性格の不一致を理由に離婚を請求しても相手方が離婚に応じない場合、それでも離婚したいと強く願うときには、離婚をしたくないと主張している側に、「解決金」を支払うことで離婚をすることが可能です。
    ・解決金は、解決するためのお金であって、慰謝料とは異なります。慰謝料は、離婚原因となる有責不法な行為をした者が謝罪のために支払う、という意味がありますが、解決金には、そのような意味はありません。
    ・なお、解決金には相場がありません。当事者がどれだけ離婚を急ぐか、ということに左右されるからです。

財産分与

  • 離婚する際に、財産を分けることを「財産分与」といいます。
    財産分与の目的は、それまで夫婦が協力して築き上げてきた財産を公平に分配することです。また、財産分与には、離婚後一方だけが苦しい生活をしないようにするという扶養的な意味合いもあります。
  • 早く離婚したいという気持ちが強い場合には、十分な話し合いをせずに判断してしまう場合も多々見られます。後になってもめないためにも、お互いがそれぞれ新しい道を歩んでいくためにも、経済面での清算もきちんと行いましょう。
  • 分与の割合はどのように決めるのでしょうか。
    不動産や預貯金など、自分名義のものは離婚後も自分のものだと考えてしまいがちです。しかし、どちらの名義であるかということだけで判断してしまうと、分与の割合が一方に偏ってしまうことも多く、公平な清算になりません。

  • 基本的には、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度によって決まる、という考え方がとられています。では、どうやって貢献度を決めるのでしょうか。
  • 夫が働いて得た収入で家計を支え、妻は家事に専念して生活を支えているというケースも多くみられます。夫婦共働きの場合にも、家事や子育てによって勤務形態が制限されるということもあるでしょう。このようなことを考慮すると、財産形成に対して、どちらがどれだけ貢献したかを判断するのは非常に難しい問題です。そのため、一般的には、収入額だけではなく、家事労働も評価の対象として、5:5とする傾向にあります。
  • 財産分与の対象となる財産
  • 共有財産
    共有名義のマイホームや自動車など、結婚後に夫婦が協力して築いた共有名義の財産です。タンス預金やヘソクリ、結婚後に購入した家財道具などもこれに含まれます。
    実質的共有財産
    預貯金、株、不動産、自動車など、結婚後に夫婦が協力して築いた財産ではあるが、一方の名義のものです。離婚の際には、名義に関わらず、結婚期間中に夫婦が協力して築き上げてきた財産は分与の対象となります。

  • 財産分与の対象とならない財産
  • ・特有財産
    結婚前に貯めた預貯金や、結婚前に購入した家具などです。結婚後に親兄弟から贈与されたものや、相続遺産などもこれに当たります。
  • 住宅ローンの処理方法
  • 夫名義の住宅は、どのように財産分与で分けるのでしょうか。
    ① どちらも住まなくなって売却する場合
    評価額から住宅ローン残額を差し引いた残額を2で割るのが典型的な方法です。
    ② しかし、実際には、どちらかが住み続けることもあります。
    この場合、次のような事情によって財産分与の方法、計算方法は変わってきます。
    〈住宅の財産分与で考慮される事情〉
    ⅰ 住宅にどちらが居住するのか
    ⅱ 住宅ローンの残額、債務者・連帯保証人
    ⅲ 購入時の頭金
    夫婦以外の者(実家等)が援助した額、結婚以前の貯蓄から支払った額

    名義変更における注意点  
    ローン負担付で妻が住宅を取得する場合、ローンの債務者の変更は、夫婦の話し合いだけで変更することはできません。銀行に事情を説明して、ローンの名義を変更する、その他の方法を検討することになります。
  • 退職金
  • ① 既に退職金が支払われている場合
    婚姻期間中の部分が、財産分与の対象になります。ただし、同居期間相当分だけを分与の対象財産とし、別居期間相当分を対象から除くことが多いです。
    ② まだ退職金が支払われていない(まだ退職していない)場合
    将来の退職金は、あくまで将来支給を受ける可能性があるに過ぎません。そこで、必ず財産分与の対象になるとは一概に言えません。しかし、退職金は給与の後払いとしての性格があることから、その支給を受ける蓋然性が高い場合には、財産分与の対象とされています。

親権者

  • 親権とは、父母が、一人前の社会人となるよう子供を監護教育し、子供の財産を管理し、または養育することを内容とする、親の権利義務の総称といわれています。親権には、権利だけでなく義務を伴うという要素があります。
  • 未成年の子供がいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません。これは、離婚する場合には、どちらかの単独親権としなければならないためです。
  • 離婚だけを行い、子供の親権者の決定・指定は後で決めることはできません。夫婦間の合意で親権者を指定できないときは、協議離婚の届出ができないので、調停や裁判で親権者を定めることになります。ここで大切な事柄は、子供の生活・福祉を考えて決めることです。親のエゴや離婚の際の意地の張り合いなどで決めるものではない、ということを念頭に置いてください。
  • 調停や裁判における親権者を定める基準
    ① 監護の継続性の維持(現実に子供を監護・養育している者を優先)
    それまでの子供の監護・養育の状態がどのようなものであったか、という実績が重視されます。 これは、現在、子供の生活・監護状況が安定しているのであれば、現在、子供の面倒を見ている方(監護している者)と子供の結びつきを尊重すべきであり、この状況をあえて変更させる必要はなく、また変更させることは適切ではない、という考えによります。但し、別居している子供を無断で連れ去り、以後、子供との生活を続けたという場合は、安定した監護状況が続いたとは認められないのが一般的です。
    ② 乳幼児の母性優先(乳幼児については、母性的役割を持つ者による監護を優先)
    子供が幼い場合には、母親が優先される傾向にあります。子供が幼いと、母親の存在が子供の情緒的な面において不可欠だ、という考えによるものです。但し、近時は、単純に母親というだけで母親を優先することは妥当でない、という考えも強くなっております。また、「母親」とは、生物としての母親を指すのではなく、母性的な役割を果たしている者と理解される方向にもあります。
    ③ 子供の意思の尊重(15歳以上の子供については、その意見聴取)
    子供の意思も考慮されます。特に子供が15歳以上であれば、必ず子供の意見を聴かなければならないことになっています。15歳に満たない子供でも、概ね10歳前後になれば意思を表明する能力があると考えられており、その意思は親権者を定める際に重要な要素となります。
    ④ この他、子供の監護・養育能力(意欲や能力、経済力等)の有無を考慮することはもちろんです。
    ⑤ また、兄弟姉妹は分離すべきではない(特に子供が幼い場合)、という考えもあります。これは、血のつながった兄弟姉妹を分離することは、子供の人格形成に深刻な影響を及ぼすためです。
    ⑥ さらに、他方の親(子供と別居することになった親)と、子供との面会交流を許容することができるかどうか、も問われることがあります。

    裁判所では、このように様々な事情・要素を考慮して、子供の福祉を実現する観点から親権者を定めることになります。
    親権者の指定は、あくまで子供の福祉・利益は何か、という問題です。したがって、夫婦間で争いになっている状態ではありますが、相手を攻撃するなど、夫婦で子供の取り合いをしているかのような状態となることは避けなければなりません。

  • 離婚後の子供との間柄・関係
    子供を離婚後も夫婦の共同親権とすることはできません。必ず夫婦の一方が親権者となります。子供が数人いるときは、それぞれの子供について親権者を決めなければなりません。その場合、夫と妻に分けることもできますが、上記のとおり、子供の人格形成を考えて慎重に決める必要があります。
  • 親権者の記入には細心の注意が必要です。
    離婚届を早く受け付けてもらいたいがために、とりあえずどちらかを親権者として記入しておいて、離婚が成立してから改めて話し合おうと思っても、親権者は離婚届に記載したとおりに戸籍に記入されてしまいます。後で変更するつもりであったとしても、親権者の変更は家庭裁判所の調停手続が必要ですから、簡単に変更できるものではありません。

監護権者

  • 監護権者とは、親権の一部である「身上監護権」を有する者と定義されています。
    簡単に言えば、子供を引き取り、生活を共にし、身の回りの世話をする人のことです。離婚の際には、親権者と監護権者を別個に定めることもできます。
  • 例えば、夫婦双方が親権を譲らない場合などに、親権者と監護権者に分けて、それぞれが部分的に子供の責任を負うというケースがあります。親権者を父親と定め、監護権者を母親と定めた場合、実際に引き取って子供の面倒をみるのは母親ということになります。子供がまだ幼い場合や、親権をめぐる父母の対立が激しい場合にこのような方法をとることが考えられます。しかし、親権と監護権の分離は、通常、子供にとって有益ではありませんので慎重に判断しましょう。
  • あなたが子供と生活することを最も望み、あなたと生活した方が子供も幸せになれると思うなら、親権を譲って自分が監護権者になり、子供との生活を優先した方がいい場合もあります。
  • このような監護権者のメリットをまとめると、以下のようになります。
  • ・母が財産管理能力を欠いているような場合には、父に親権を与え母に監護権を与えるメリットがある。
    ・監護権は両親以外の第三者にも与えることが可能である。
    ・離婚に関しては争いがないが、子供をいずれが引き取るかで意見が合わず紛争が長引く場合に、妥協を図ることができる。
    ・子供の福祉のため、父母双方が共同で監護することができる。
    ・親権者となった一方の親の事情あるいは子供の事情で、直ちに親権者のもとで生活できず、しばらく他方のもとで生活する必要がある場合に便利である。
  • 監護権者のポイント
  • ・監護権者は、子供の養育の権利と義務がある。
    ・親権者と監護権者を分けることは少ない。
    ・監護権者になる場合は、取り決めを文書にして残す。
    ・両親以外の第三者も監護権者になれる。
    ・誰が監護権者であるかについて書面に残していない場合、問題となる可能性がある。
  • 離婚届には親権者を記載する欄がありますが、監護権者を記載する欄はありません。離婚後のトラブルを避けるため、親権者とは別個に監護権者を決める場合には、必ず書面に残しておいた方がよいでしょう。
  • 監護権者の決め方
    監護権者は、親権者を決める場合と異なり、離婚と同時に決めなければならないわけではありません。離婚が成立した後も監護権者を決めることができます。父母が協議で決めることができないときは、家庭裁判所に申し立てて決めてもらうことになります。

面会交流権

  • 離婚後、親権者または監護権者にならなかった方が、子供に面会したり一緒に時間を過ごしたり、文通したりして交流を図ることを面会交流といい、その権利を面会交流権と呼びます。民法改正により、現在では民法766条1項により、「面会及びその他の交流」について規定されています。
  • 面会交流が問題となるケースとして多いものは、離婚の話し合いがこじれたまま妻が子供を連れて実家へ帰ってしまっているとき、妻が夫に子供を会わせないようにしているといった場合です。この場合、離婚成立の前後を問わず、夫は家庭裁判所に面会交流の申立てをすることができます。
  • 面会交流が認められる基準は、子供の利益、子供の福祉です。会うことで子供に悪影響があるような場合には、権利はあっても面会交流権が制限されます。
  • 判例などによると、子供の福祉に適合するか否かの判断基準として、以下のような事情をもとに判断しています。
  • ・子供の意思
    ・子供の年齢
    子供の年齢が低いと、面会交流による心身への影響が大きく、認められにくくなります。
    ・子供の生活環境に及ぼす影響
    ・親権者(監護をしている者)の意思
    ・親権者の養育監護への影響
    ・事実上の離婚状態に至った経緯
    ・監護している親と監護していない親との間での、離婚無効訴訟が継続中であること
    ・監護していない親の離婚歴
    ・別居期間
    ・別居後の相互の関係
    ・その他諸般の事情
  • 面会交流の意義
    面会交流は、一般に三つの意義があると言われています。
  • ①子供を監護していない親の、子供と会う利益の実現。
    ②子どもを監護している親の、監護していない親に子供を会わせてあげたいという利益の実現。
    ③子供の、監護していない親と会いたいという利益の実現。
    現在では、上記③の子供の利益の側面を中心として理解されています。
  • 面会交流の定め方
  • ・まずは両者の協議により、面会交流の方法等について決めます。
    ・協議が調わない場合は、調停の利用が考えられます。面会交流を決める前に、子供がどのように監護していない親と接するか、監護していない親がどのように子供に接するかを見極めるために、試行的に裁判所において面会交流を行うこともあります。
    ・マジックミラー越しに監護している親が確認し、場合によっては監護していない親の面会交流に安心し、調停の成立に向かうこともありますが、そうでない場合かえって不安を持つこともあります。調停が成立しない場合は審判となります。
    ・家庭裁判所の実務では、面会交流を認めることが子供の福祉に適合するかどうか、という観点から面会交流の許否を決めているようです。
  • 面会交流の拒否・制限・停止
  • ・親権者または監護権者にならなかった方の親に、子供を会わせないようにすることはできません。面会交流権は、親として当然に持っている権利であり、民法にも規定されています。
    ・しかし、面会交流を制限、停止することができる場合もあります。相手が勝手に子供と会ったり、子供を連れ去ろうとしたりする場合は、面会交流権の制限を家庭裁判所に申し立てることができます。面会のしかたによっては、子供に動揺を与え、精神的不安を招くこともあり得ます。
    ・具体的な悪影響が出るような場合には、子供がある年齢に達するまでの面会を禁止する、親権者または監護権者同伴の場で会うなどの方法も考えられます。子供との面会の際に復縁を迫ったり、金銭を無心したりするような場合には、面会交流権の濫用として、面会交流権の停止を家庭裁判所に申し立てることができます。
  • 面会交流が認められない場合
  • ・親権喪失事由(著しい不行跡)がある場合など、親権者として失格とみなされる場合は、面会交流権も制限されます。
    ・支払能力があるにもかかわらず養育費を負担しない親の場合には、子供に対する愛情に疑問がありますので、面会交流権が制限される可能性があります。
    ・子供や親権者または監護権者に暴力を振るったり、その他の悪影響を及ぼす恐れがあるような場合。
    ・子供が面会交流を望んでいるかどうか、その意思を慎重に調査して判断されることになります。
    ・思春期の子供など年齢的に非常に難しいときで、別れて暮らす親と会うことによって、その精神状態が動揺することが考えられるような場合、認められない可能性があります。
    ・片方の親が、子供に暴力を振るったりしていて、もう一方の親が子供を救うために子供を連れて離婚したような場合には認められません。
    ・子供を引き取って育てている親が再婚し、子供とともに円満な生活が営まれ、別れた親と会うことが子供に動揺を与えマイナスであるとの評価がされれば、認められない可能性があります。

      
  • 面会交流の取決め事項 面会交流の具体的な取決め事項としては、以下のようなものがあります。
    ・月に何回
    ・何時間
    ・場所
    ・宿泊してよいのか
    ・付添いの有無
    ・子供の受渡し方法
    ・電話、メール、手紙のやり取りを認めるのか
    ・学校行事へ参加できるのか
    ・誕生日等にプレゼントできるのか
    ・連絡方法

    しかし、これらすべてについて取決めをするとなると協議に相当な時間を要するだけでなく、あまりにも細かい取決めは将来子供の成長具合に合致しなくなる恐れもあります。
    そこで、以下のように記載して、実情に柔軟に対応できるようにしておくのが一般的です。
    「乙(妻)は、甲(夫)が丙(子)と面会及びその他の交流をなすことを認める。面会及びその他の交流の具体的な日時、場所、方法等は甲と乙が丙の福祉に十分配慮しながら協議して定めるものとする。」
    なお、話し合いで決まらなければ、家庭裁判所へ子の監護に関する処分として面会交流の調停を申し立てます。そして、調停でもまとまらなかった場合には、手続きは移行して審判になります。
  • 面会交流の実現
    調停または審判で面会交流の内容が決まっても、相手方がこれに応じず、結果として実現できない場合があります。このような場合、まずは履行勧告により面会交流の実現を勧告してもらうことができます。また、再度調停を申し立てることも考えられます。このような方法をとったとしてもなお相手方が応じない場合は、間接強制という形で強制執行していくことになります。

  • ※履行勧告とは、家庭裁判所で決めた調停や審判などの取り決めを守らない人に対して、それを守らせるための制度です。相手方が取り決めを守らないときには、家庭裁判所に対して履行勧告の申し出をすると、裁判所では、相手方に取り決めを守るように説得したり、勧告したりします。しかし、義務者が勧告に応じない場合は履行を強制することはできません。
    ※間接強制とは、債務の履行を確保するために相当と認める一定額の金銭の支払いを命ずることによって債務者を心理的に圧迫して、債権内容を実現させる方法です。つまり、相手方が面会交流を履行しない場合に、相手方に一定の賠償金を支払わせることによって心理的に圧迫して、面会交流の実現を強制する方法です。

年金分割

合意分割と3号分割があります。
・年金の分割請求は、原則として、離婚して2年を経過するとできません。
  • 合意分割
  • ・平成19年4月1日以後に離婚した場合、当事者間の合意や裁判手続きにより分割割合を定めたときに、当事者の一方からの年金分割請求によって、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬を当事者間で分割することができます。
    ・分割割合は、話し合いや裁判手続きで決めますが、最大2分の1までです。当事者間の合意により分割割合を決めた場合は、公正証書または公証人の認証を受けた私署証書(自分たちが作成した文書)によって、合意した分割割合を明らかにすることが必要となります。合意ができないときには、家庭裁判所に分割割合を定めるよう申し立てることができます。
  • 3号分割
  • ・平成20年5月1日以後に離婚した場合、平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間について、当事者の一方からの年金分割請求によって、平成20年4月1日以後の相手方の厚生年金の標準報酬を2分の1に分割することができます。

    ※ 標準報酬とは、厚生年金の保険料の基になるもので、会社等からの給料により金額が決まります。また、年金額を計算するときの基にもなります。
    ※ 国民年金の第3号被保険者期間とは、厚生年金に加入して働いている夫や妻に扶養されている配偶者である期間をいいます。